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意外すぎるアニメの成長市場

  • 執筆者の写真: VIVIFY Team
    VIVIFY Team
  • 5月13日
  • 読了時間: 6分

更新日:10月10日


インド・サウジアラビア・南アフリカでアニメ市場が急成長
世界で拡大する日本アニメの市場

日本発のアニメコンテンツが世界各国で熱い盛り上がりを見せています。


全世界のアニメファンの人数は、推定15億人に上ると言われています。その中で、海外市場の成長が日本のコンテンツ業界を大きく牽引しています。2023年には日本国外のアニメ市場規模が国内市場を上回り、前年比18%増という加速成長を記録しました。


2030年までに世界のアニメのストリーミングは海外だけで160億ドル(約1.7兆円)の市場へと成長する業界予測もあります。Netflixによると「全世界の加入者の半数以上がアニメを視聴している」状況で、まさにアニメはグローバルでメインストリームとなりつつあるのです。


インド:爆発的成長を遂げる新たなアニメ大国


インドの首都ニューデリーで2024年9月に開催された日本アニメイベント「Mela! Mela! Anime Japan!!」の告知ポスター
インドで開催された日本アニメイベント「Mela! Mela! Anime Japan!!」の告知ポスター

昨年の9月に、ソニー・ピクチャーズ系列アニメストリーミングサービス「Crunchyroll」や、ヤマハ社・スズキ自動車社などの日系大手40社以上が出展する、アニメイベントがインド首都ニューデリーで開催され、約47,000人の来場者の熱気を示した


人口14億を超えるインドは、実はアニメ市場において「隠れた巨人」です。


インド国内のアニメファンは約5,300万人を超えるといわれていて、米国に次ぐ世界第2位の規模とされています。近年は若年層を中心に日本のアニメ人気が爆発的に高まり、2024年のインドのアニメ市場規模は約18億5,540万米ドル(約2,700億円)に達し、2030年には50億3,600万米ドル(約7,300億円)規模に拡大する見通しです。


年平均成長率にして約13%超という驚異的なペースで、市場拡大が「確実且つ急速に」進んでいます。


元々は「ドラえもん」や「クレヨンしんちゃん」など、子供向けのアニメのヒンディー語吹き替え版がインドで普及していた背景もあり、若者世代を筆頭にデジタル配信で日本アニメに関心を持つ層が激増し、新海誠監督の『すずめの戸締まり』映画『呪術廻戦0』が予想外のヒットを記録するなど、話題が尽きません。


実際、インド最大級のポップカルチャーイベント「コミコン・インディア」は 20万人を超える来場者を誇り、年々参加者数も開催都市も増えています。かつては一部マニアの嗜好と見られていたアニメが、今やインドのエンタメシーンで主役の一角を占めているのです。Crunchyroll のシニアマーケティングディレクター Akshat Sahu 氏によると、インドでの「アニメ市場は、静かに膨大していき、爆発を迎えていた」。


今後数年で、世界アニメ市場の伸びの60%をインドが占めると予測されています。まさにインドは「新たなアニメ大国」になりつつあります。


サウジアラビア:国家戦略と若者文化が後押し


サウジアラビアで建設予定、ドラゴンボールの公式テーマパーク
サウジアラビアで建設予定、世界初「ドラゴンボール」のテーマパーク

中東のサウジアラビアも意外なアニメ市場のホットスポットです。


総人口は約3,500万人ながら、その大半を占める若い世代にアニメ人気が浸透しつつあります。サウジアラビアのアニメ市場規模は現時点で約2億3,100万米ドル規模と推定されています。政府主導の文化振興策に支えられ今後の拡大余地が大きいと見られています。


サウジ政府は経済多角化政策「ビジョン2030」の下で、日本との文化交流を推進しており、日本のアニメ・マンガへの熱も公式にバックアップされています。その枠組みでは、アニメイベントの開催や日本企業との協業が進み、首都リヤドには大型のアニメ娯楽施設や常設イベント会場も登場しつつあります。こうした官民挙げての取り組みにより、アニメはサウジのエンタメ市場で存在感を増しています。


民間レベルでも、サウジ発のアニメ制作会社 Manga Productions が日本の東映アニメーションと提携して劇場版アニメ『The Journey(ジャーニー)』を制作するなど、本格的にコンテンツ産業に乗り出しています。同社は国内で日本のアニメスタジオとの共同制作や人材育成を積極展開しており、リヤドで開かれる大規模イベント「Riyadh Season」内に日本のアニメ博覧会を誘致するなど精力的です。


実際、2022年のRiyadh Seasonでは日本のロボットアニメの実物大フィギュアを展示する特設会場が登場し、話題を呼びました。サウジはこのように「石油以外」の成長分野としてアニメやゲーム産業に注力しており、日本企業にも現地パートナーと組んだコンテンツ開発を呼びかけています。


もちろん市場拡大には課題もあります。中東地域ではアラビア語へのローカライズ(吹替・字幕)不足が指摘されており、英語が苦手な層へのリーチが限定的という側面が見られます。また、宗教・文化的なコンテンツ規制も厳しく、一部の過激な描写を含むアニメは修正や配信見送りとなるケースもあります。それでも中東・北アフリカ(MENA)地域全体のアニメ市場は2025年以降年率13.6%という高水準の成長が見込まれており、その中心にいるサウジアラビアの存在感は無視できません。


実際、サウジには世界有数の大規模アニメファンコミュニティが存在するとも言われ、各都市にアニメグッズ専門店が続々オープンするなど裾野が広がっています。CrunchyrollやNetflixといったプラットフォームも中東向けにアラビア語字幕版・吹替版コンテンツを拡充しており、今後は現地語への一層のローカライズや、現地発IPのアニメ化などが進めば、サウジ発のアニメブームが中東全域に波及していく可能性も十分あるでしょう。


南アフリカ:静かなブームとファンコミュニティの台頭


南アフリカ首都ケープタウンで撮影される実写版「ワンピース」
南アフリカ首都ケープタウンで撮影される実写版「ワンピース」(MyBroadbandより引用)

アフリカでも日本アニメの人気は着実に芽吹いています。その中でも南アフリカは経済規模やインフラ環境の点で突出しており、アニメ市場の開拓が進む「隠れたフロンティア」です。


現地メディアによれば、南アフリカの学生層で日本のアニメが大きな人気を集めているとのこと。『ドラゴンボールZ』『NARUTO -ナルト-』『ポケモン』といったお馴染みの作品は若い世代に定着しており、近年は劇場で『呪術廻戦0』や『鬼滅の刃 無限列車編』の映画が上映されるなど、大手映画館チェーンのSter-Kinekorなどは日本のアニメ映画を積極的にラインナップに加えています。これは一昔前には考えられなかったことで、着実な市場拡大の証拠とも言えます。


南アフリカではファンコミュニティの存在感も拡大しています。昨年行われた19,000人の調査では、アニメに対する関心を持つ視聴者の割合として、インドやカナダ、イギリスなどよりも1位の42%でランクインしました。2024年の「Comic Con Africa」などポップカルチャーイベントではアニメ関連の出展やコスプレ大会が人気となり、オンライン上でも地元アニメクラブやSNSグループが活発に情報交換を行っています。かつて「オタク趣味」と捉えられていたアニメが再評価され、南アフリカのアニメコミュニティが活気づいているそうです。


実写版「ワンピース」の撮影地にもなった南アフリカは、今後のアニメ市場の成長のフロンティアとなるでしょう。


グローバルカルチャーの新潮流


インドの若年層市場から、国家戦略としての文化投資が進むサウジアラビア、そしてファンコミュニティが急成長する南アフリカまで──アニメの拡大は、いま世界のエンターテインメント地図を塗り替えつつあります。


かつて「意外な地域」と見なされていた国々が、今やアニメ制作・ローカライズ・消費の新たな中心地となり、グローバルなコンテンツ産業の未来を形づくっています。


VIVIFYでは、こうした文化変化や新興市場の潮流を分析し、日本企業が世界でより深く、より持続的にブランド価値を高められるよう支援しています。インドやサウジアラビアをはじめとする成長市場での展開現地パートナーシップ構築について、ご関心のある方はぜひお気軽にお問い合わせください。

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